鳩山内閣がスタートし徐々にではありますが「政治主導」というものの形が見えてきました。
今までは官僚がいくつもの法案を大臣に提出し「これでいいですか?」と訊き、大臣側が承認を出すという方式だったそうです。
これって時代劇に出てくる殿様の「よきにはからえ」というヤツと同じなのでは…
そのやり方がこれからは大臣・副大臣・政務官などが数人で集まってアイデアを出し合うなどして基本方針を決め、その方針を官僚に実行させる、という方式になったようです。
疑問点が無いわけではないのですが、政治主導という意味では多分正しいのだと思います。
しかしこの方式、今回の内閣ならば上手くこなせる可能性がありますが、これから先ずっと続けられるシステムなのでしょうか?
このやり方だと政治家の意思が大きく政治に反映されます。
当然有能な政治家ならば問題はないのですが、もしも能力に問題のある政治家が大臣ポストに就いてしまったらどうなるのでしょう?
想像を絶するような国家の迷走が始まる、という事なのでしょうか?
今回の内閣は「オールスター」と呼ばれるぐらい名の知れた人たちが入っていますが、入閣しなかった人たちの中に彼らに匹敵するだけの実力を持っている人が何人残っているのか不明です。
無能な人間を大臣に据えないためには人材の層の厚さが重要なのですが、民主党は人材難の気配があります。
では対する自民党はどうかと言うと、やはり不安。
今までのやり方ならばともかく、これから始まる政治主導のやり方だと対応できる人材はかなり限られてくるのではないでしょうか?
何にしても人材が重要なわけですが、もう一つこれに関して問題になりそうなマニフェストがありましたよね。
民主党のマニフェストに含まれていたかどうか覚えていないのですが、選挙前の与野党の発言の中には双方とも「政治主導」と「議員削減」が含まれており、この二つに関しては与野党関係なく実施する方針だったはずです。
これから人材が必要だという時に議員削減…
本当に出来るのでしょうか?
現時点において議員が足りないとは思いませんし、今でも議員の総数は多過ぎるとは思います。
諸外国と比べても人口比での議員数の比率は高いと聞きます。
日本の議員は多過ぎるので減らすべきなのですが…
一体どこまで減らすべきなのでしょうか?
鳩山内閣では「政府に議員を100人以上送り込む」と言っていました。
自公政権の際も現実的に70人ほど政府に議員が送り込まれていたそうです。
つまり与党になるとかなりの人数が何らかの形で政府に送り込まれるわけです。
しかも政治主導になったら送り込まれる人たちの仕事は激務になります。
しかし議員の仕事はそれだけではないでしょう。
政府の仕事だけでなく国会内の小委員会などにも出席しなければなりません。
…大丈夫でしょうか?
政権交代前も政権交代後も、与党は小選挙区制の影響か野党の議席を大幅に上回る議席数を獲得しており与党側は数の上では相当に余裕があります。
が、このような数的有利な状態が今後も続くとは限りません。
どこかの時点で与野党拮抗という状況にもなるでしょう。
その状況の中で与党側は政府に100人規模の人員を送り込むわけですよね?
しかも有能な人材を。
という事は残るのはそこそこの実力の人ばかりの可能性も…
国会の方の主導権を野党に握られてしまう、などという事は起こらないのでしょうか?
少なくとも各委員会での議論を野党ペースで進められる可能性は高そうですよね。
現在の総議員数でも、議席が拮抗した上に与党から100人以上政府に行ったら国会に専念出来る人数の差は2対1ぐらいで野党の方が多くなるはず。
ここからさらに総議員数が削減されると、この差はさらに開くのではないでしょうか?
しかも野党側は有能な人材が残っているのでその力の差は歴然。
今まで以上に国会の運営が難しくなるのではないでしょうか。
そういう事を考えると「政治主導」と「議員数削減」を同時に行うと、安定した政権の運営が困難になるような気がするのですが…
もちろん各議員の能力を向上させれば、そういう事態は避けられるでしょう。
が、国会議員の場合官僚と違い選挙というモノが存在します。
数年で任期切れになってしまうわけです。
有権者が政治に常に興味を持ち、自分の選挙区の候補者の能力を理解できていればいいのですが、現状では能力よりも知名度などが勝ってしまっています。
政治主導のためには有能な人材が豊富に必要なのですが、それを判断する術が有権者には少ないのではないでしょうか。
今回の選挙では「ドブ板選挙」など候補者の能力よりも知名度などのイメージで勝負をし、勝ってしまった候補者もかなりの人数のようです。
この傾向が今後も続いたらどうなるのでしょうか?
優秀な現職の議員がいたとして、その人物が地味で目立たないタイプだったとしたら…
さらに現職の議員は政治主導のために日々の仕事が激務になり、おそらく選挙区には帰れません。
それで選挙に勝てるのでしょうか?
一歩間違えると有能な人間ばかり落選するというおかしな状況に陥る可能性もありそうです。
政治主導というからには当然、大臣にはその分野に関してかなり詳しい人材に就いてもらわなければなりません。
政治主導では行政と立法府の対立は今まで以上に激しくなるはずですから。
今までのように派閥順送りや年功序列では政治主導はできないでしょう。
各国務大臣はある種「専門職」に近くなるはずです。
大臣になる前から「私はこの分野に関してなら詳しいです」と胸を張って言えるようにならなければいけません。
それ程の人材を育てるなり見つけてくるなりするというのはかなり難しいのではないでしょうか?
となると医師会や弁護士会などを始め各業界との連絡を密にし、現場の状況がすぐに政党に伝わるような仕組みを作るか、それらの業界から政治家になってくれる人を探すという事になるのでしょうけど…
現在のように各団体が人まとまりになって「どの政党を応援する」というようなやり方だと、情報が一方の政党にしか伝わらず混乱を招く恐れもありそうです。
となると今までのように「○○会として○○党を支持します」という形ではなく、各団体の中でも与党支持と野党支持という具合に色分けし、両方の党に人材や情報が流れるという形になっていくのでしょうか?
何か大きな混乱を招きそうな気が…
二大政党制って「政治の世界の話」というだけではなく、極論すれば「日本中のすべての人を色分けする」という事なのかもしれません。
これはひょっとして「政権交代できる政治システムになりました」というだけでなく、日本そのものの仕組みを変えて行く事になるのかもしれません。
「政治主導」と「議員数削減」を行うつもりならば「優秀な人材の確保」が重要になり、そのためには「優秀な人材を育てる・見つける」仕組みと「選挙で優秀な人材を見抜く」力が必要になりそうです。
選挙のやり方を含め、政治や国のやり方やあり方、国民の政治や社会に対する意識などを根本から変える必要があるのかもしれません。
「政権交代は完了した、後は任せた」ではなく、二大政党制と政治主導を維持するために国民が常に政治に関心を払い意識し続けなければならない時代になった、という事なのでしょう。
これ、ものすごく大変な事なのでは?
国民全員の意識を「議員任せ」から「自分達で選ぶ」に変えなくてはならないわけですから、ひょっとして明治維新(というか開国・文明開化)並みの大転換なのかもしれません。
大きな改革が出来るかもしれませんけど、それは同時に大きな混乱を伴うものでもあるのではないでしょうか。
生みの苦しみ、と思ってかなり耐える必要があるのかもしれません。
上手く行けば日本は強い国になれそうですが…かなり難しそう。
「痛みを伴う構造改革」どころではなさそうですし…
仮に、鳩山内閣がこの改革に成功し政治主導を実現できたとしても、まだ問題が残ります。
民主党は「二大政党制」を掲げていました。
当然、「いつかはまた政権交代が起きる」事を前提にしているはずです。
となると民主党だけでなく自民党の存在も重要になるのですが…
果たして「政治主導達成後」の政権運営が自民党に可能なのでしょうか?
一度仕組みを変えてしまった以上は政権交代をした後もこの方法を続行して行くのが基本になるはずです。
自民党も大臣には「有能な専門家」を据えないと国家が迷走を始めてしまいます。
民主党が野党の時に行っていたように「ネクストキャビネット」とか「次の内閣」というものを作り、大臣候補を育てていかなければならないでしょう。
実際に民主党の「次の内閣」のメンバーから直接大臣になった人は少数のようなのですが、そのメンバーの中から「副大臣」や「政務官」が何名か選ばれたようですので、人材育成の機能は持っていたのでしょう。
自民党も似たような事をやって人材育成をしておかないと、与党になった途端に国家が機能停止に陥ってしまいます。
それができないからと言って以前のやり方に戻すわけにはいきません。
以前のやり方の結果が官僚主導を引き起こしてしまい、税金の無駄遣いなどの問題の原因になったのですから。
あのまま放っておいたら「自民党と官僚による国家の緩やかな死」に至ってしまうと思い、多くの人は「民主党による大手術を受ける」という賭けに出たのですから、より良い方法に改善するのならばともかく、元に戻すという選択肢はありえないでしょう。
民主党のやり方を踏まえた上で、さらに民主党を超えるような政治ができるかを自民党は問われる事になるはずです。
また、民主党側も「二大政党制」を掲げ、政権交代をした以上は「次の政権交代」の際に引継ぎが速やかに行われるような方法も考えなければならないのではないでしょうか。
例えば「政治主導における官僚の使い方」を自民党に教える事ができるのでしょうか?
政治を自動車に例えるならば「政策やビジョン」は「目的地を決めるようなもの」であり、「行政の運営法」は「自動車の動かし方」です。
目的地はそれぞれが勝手に決めればいいだけですが、動かし方は共通でないと困ります。
その共通部分は共用してもらわないと国民としては困ります。
今までの「タクシーに乗るだけ」のような政治の運営法から自民党が脱却できなければ「二大政党制」にはなりません。
自民党が民主党から見よう見まねでもいいので、新しい時代の行政運営法を身に付ける事が出来るかどうかも、今後の日本にとっては重要なのかもしれません。
…もっとも、今までの自民党の行動パターンから見ると、官僚出身者を候補者として大量に受け入れる事でこの問題を解決してしまいそうですが。
それだと「違った形の官僚主導」になりそうですよね…
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